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「あんた、あの人の息子さんなんですよね?
服返してもいいですか?」
男は冨樫を見上げ、そう訊いてくる。
「預かってもいいですが。
あなたに返さなきゃいけないあなたの服は父が着ているのでは?」
「あげます」
そう男は言った。
「あげます、あの革ジャン。
俺が間違っていました。
今になって思うんです。
あの人は笑顔で、服貸してあげるよと言いながら。
ほんとうは俺が強い意志で強盗をやめるというのを期待していたんじゃないかなって。
でも、俺はそのまま、結局、大事な革ジャンをあの人に預け、銀行強盗をしてしまった。
反省の意味も込めて、あの革ジャンはあの人にあげます。
お袋にも謝ります。
革ジャンのことも。
犯罪を犯してしまったことも……。
あの、お父さんにありがとうとお伝えください」
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