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えっ? 何故?
あなたの犯罪を止めもしなかった父に? と冨樫は思ったが、
「きっとあの人にはわかってたんです。
迷いながらも服をかえてしまった俺は。
今回、なんとか難を逃れても。
またいつか、犯罪に首を突っ込んでしまう。
そんな心弱い人間なんだと。
だから、必ず失敗する杜撰な計画の銀行強盗をやらせてみたんじゃないでしょうか」
もう絶対に罪は犯しません、と男は言った。
「誰かを傷つけたり。
取り返しのつかないことをやってしまわなくてよかったです」
男は少し安堵したような顔をしていたが。
……銀行強盗未遂も結構な取り返しのつかないことですけどね、と冨樫は思っていた。
だが、刑事だった父は、いずれ誰かに引きずられるがままに、とんでもない犯罪を犯してしまいそうな匂いを彼から感じ取っていたのかもしれない。
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