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「今から自首してきます。
みんなが何処にいるのかはわからないけど……」
そう言いながら、男はいきなり服を脱ぎ、冨樫に渡してきた。
その格好で警察に行ったら、違う意味で捕まると思います……と思った冨樫は自らも服を脱ぎ、男に渡した。
「私のスーツを着て歩いていたら、そのうち、人間の世界に戻れると思います。
たぶん、あやかしの世界に染まったその服を着て、この辺りを歩いていたから、こっちに入り込んじゃったんですよ」
男はなんの話だかわかっていなかっただろうが、ありがとうごさいます、と頭を下げてきた。
何処へともなく男が歩いていったあと、冨樫は少し迷って父の服を着てみた。
小さなときには大きく見えた父の服は少しきついくらいだった。
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