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実際、父は高身長の大きな人だったのだが。
いつの間にか、その父より大きくなっていたらしい。
この服を着て歩いていたら、父の許にたどり着けるのだろうか――。
そう思いながら、霧の街を歩いていたが、すぐ近くで声がして、誰かが腕を引っ張った。
「あっ、冨樫さんっ。
何故、ここにっ」
見たこともない犬を従え、突然、霧の中から現れたのは風花壱花だった。
「待てっ、壱花っ。
いきなり走るなっ」
と倫太郎が現れる。
「冨樫じゃないかっ。
壱花、お前、犯人を追ってたんじゃなかったのか?」
「いや~、こっちから冨樫さんの匂いがしたんで」
と壱花は笑い、
「……お前が犬かっ」
と倫太郎に罵られていた。
赤い数珠を首に巻いた白い犬は、なにを追うでもなく、ただ尻尾を振りながら、壱花の側にいた。
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