687人が本棚に入れています
本棚に追加
朝、幸い、高尾のかけた術は切れていた。
今日はみなさんにお礼を言わねば、と思いながら、ビル街を歩いていると、突然、頭の上で、
「わんっ」
となにかが言った。
え? わん?
すると、頭の上から飛び降りたなにかが、目の前でくるりと回転すると白い犬になって、駆け出していった。
突然、ビル街の道を大きな白い犬が疾走しはじめたので、通勤途中の人々は慌てて避けている。
あの犬はっ、と思った部下は慌てて追いかけた。
「すみませんっ。
リードが外れましたっ。
大丈夫ですっ。
おとなしい犬ですっ」
と周りの人を怯えさせないよう、叫びながら。
いや、リードもなにも。
首には「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」と彫られた赤い数珠しかついていないのだが。
最初のコメントを投稿しよう!