朝が来ました

3/14
前へ
/105ページ
次へ
   朝、幸い、高尾のかけた術は切れていた。  今日はみなさんにお礼を言わねば、と思いながら、ビル街を歩いていると、突然、頭の上で、 「わんっ」 となにかが言った。  え? わん?  すると、頭の上から飛び降りたなにかが、目の前でくるりと回転すると白い犬になって、駆け出していった。  突然、ビル街の道を大きな白い犬が疾走しはじめたので、通勤途中の人々は慌てて避けている。  あの犬はっ、と思った部下は慌てて追いかけた。 「すみませんっ。  リードが外れましたっ。  大丈夫ですっ。  おとなしい犬ですっ」 と周りの人を怯えさせないよう、叫びながら。  いや、リードもなにも。  首には「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」と彫られた赤い数珠しかついていないのだが。
/105ページ

最初のコメントを投稿しよう!

687人が本棚に入れています
本棚に追加