朝が来ました

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「駄目だ、タクシーつかまらないな。  電話で呼ぶか」 「社長、あっちの通りの方がタクシーよく通りますよ」  などと話している二人のあとをついて歩いていた壱花は、ビルとビルの隙間の狭い場所に人がしゃがんでいることに気がついた。  ひっ。  生きた人間がしゃがんでる方が、あやかしが潜んでるより怖いっ、と見ないフリをしようとした壱花だったが。  その男の手に、目出し帽があるのに気がついた。  自首した男と、今、とっつかまった男と、おそろいの黒い目出し帽だ。  男がブツブツ言っているのが聞こえてくる。 「だから嫌だったのに……。  昔から、断れない性格なんだよな~っ。  ……もう断る。  次からは断る。  あいつらになに言われても断る。  つまはじきにされても断る。  呑み会に誘われなくなっても断るっ。  自分の人生は自分で決めるんだっ」 「あのー」  壱花はその隙間を覗き込んで言った。
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