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俺の妻はニンゲン好き
〜 レックス 視点 〜
俺達ば ヒメウズラ ゙と呼ばれる鳥類ってことは、
よく食い物を落としていぐ ニンゲン ゙と呼ばれるオスが言ってたから知っている。
「 朝だぁぁあ!!今日も幸せなら、歌おう!!ヒュッヒュッヒュッ 」
「( うざっ…… )」
早朝5時半
同じ空間で生活している、オカメインコのルチノーであるオスの゙ クラウン ゙は、
此処にいる誰よりも早く、甲高い声で鳴いては俺達を起こしにかかる。
正確には…
特定の、ニンゲンを呼びたい為の声なのだろうが…
そのニンゲンが来るのは、もう少し後だと…俺は知っている。
だが、その声に起こされるように…
俺の妻は、目を覚ます。
「 はっ……!!パパが来るかな!? 」
巣で一緒に寝ていた俺を放棄し、一直線で部屋の端へと移動し、゙ パパ ゙と呼ぶニンゲンが来る方に行っては、その辺りでウロウロと落ち着きのない様子で動き回る。
「 まだ来ないだろう…。もう少し日が昇らないと…来ないさ 」
「 でも、今日は早く来るかもしれないじゃない!?階段を下りる音は聞こえたよ! 」
「 あれは……。イヌの、散歩さ… 」
この家には、他にも多くの生き物が生活している。
その中で、あのニンゲンは早朝前に起きてはイヌの散歩に行き、1時間ぐらいで帰ってくる。
そしてネコや魚の餌を終えてから、一度二度寝をするんだ。
俺達の元に来るのは、それからなのだが…
足音を聞いただけで、浮き足立ってる妻のマルシュとオカメインコのクラウンは、相変わらず騒がしい。
そして…最近新しく増えた、子供もまた…うるさい…。
「 ママ!ママ〜!ピヨピヨピヨピヨ 」
生後1ヶ月半の東京烏骨鶏メス、゙リリー゙だ。
ニンゲンが休んでる部屋にいるはずなのに、此処まで届く程の声で、呼び鳴きをしてる声に頭が痛くなりそうだ。
「 ガァッ!!ヒュッヒュッヒュッ 」
「 パパはまだかなー? 」
「 ピヨピヨピヨピヨピヨピヨ! 」
クラウンはニンゲンを真似て音痴な歌を歌って、
マルシュはそわそわして…。
遠くからは、リリーの悲しそうな呼び鳴きが聞こえる。
今日も…
朝から騒がしい……。
眠いままぼんやりと過ごし、毛繕いをしてから羽を伸ばして、軽く準備運動をしてから巣を下りて、水を飲みに行く。
「( きたねぇ…… )」
妻が騒いだことで、床材であり籾殻が大量に入って詰まってるのを見て、飲むのを止めてご飯でも食うかと思い、探しに行く。
いつもの場所に行けば、何もないのを見て固まる。
「( 飯がない…… )」
「 あ、ごめんね?昨日…夜にお腹空いちゃって食べちゃった 」
少しだけ振り返って、硬直してる俺に声を掛けた言葉に、小さく首を振る。
「 別にいいさ……。探せばどっかにある 」
不本意だが、あのニンゲンが来れば沢山の飯が置かれる。
だが、其れだけに頼るのは気に入らないから床材を嘴や脚で避けて、妻が飯入れを蹴飛ばしたことで落ちて、埋まってる実を拾っていく。
ちょっとした腹拵えをしていれば、階段を上る足音に、待っていた彼等は尚更騒がしくなった。
「 俺のハニー!こっちこっち!!一緒に歌おうぜ!! 」
「 パパが来る、パパが来る! 」
「 ママァァァ!会いたかった!! 」
見慣れた光景を横目に食べていれば、先に雛の方から迎えに行き、この部屋まで連れてきた。
「 ◎△$♪×¥●&%#? 」
ニンゲンは、よく分からない言葉を言ったあとに、あのうるさかった雛を俺達の家の前に置いてから、先に全ての家の水入れを回収して、ついでにご飯が入る容器も回収していった。
「 プピピピッ…!パパ、さわってー? 」
「 ○♪※□◇#△ 」
「 えー…、よしよしなし? 」
ニンゲンは、俺の妻が身体を低くしてぺったんこになるほどに、可愛く甘えた姿を放置して、他の家の方に行く。
「 ねぇ、ねぇ。パパ、パパ! 」
「( 俺がいるだろうに… )」
妻は、俺を見ようとはしない。
いつも、ニンゲンを見上げて触れて貰う事だけを待ち浴びてる。
その後ろ姿を少し眺めていれば、ニンゲンは容器を持ってこの空間から離れた。
「 はっ!?ママいない!?ふぇ… 」
「 大丈夫だよー?すぐ戻って来るよー 」
「 そ、そう? 」
1枚隔たれた窓越しに、妻は雛へと声を掛け、不安そうに泣きそうになったの止めに入ったのを見て、仕方なく溜息を付き其の横へと行く。
「 君の、足元におやつが入った容器があるじゃないか。それでも食べて待ってみたらどうだ? 」
「 ん……?あ、おやつ!! 」
気付いたらしく、ご機嫌で食べていく様子を見ていれば、お隣の真っ白な夫婦はやけに騒がしい。
「 あ!?あっ、どうしよう!アナタ…アナタ、産まれそう!! 」
「 ふぁ!?そうなのか!?まて、今…巣を作るからな!! 」
「( 今からなのか… )」
お隣が卵を産む時間なんだと察すれば、心の中で適当に頑張ってくれ、と思ってからニンゲンが立ち去った方向を健気に見つめる妻へと近づく。
「 直ぐに戻ってくるさ 」
「 そうかな…怪我してないといいけど… 」
「 まぁ…そうだな… 」
俺達も…
そろそろ…子供が欲しくないか?
そう言えるはずもなく、そっと首元を触れて慰めれば、少しだけ顔をこっちに向けて嬉しそうに笑った。
「 ん、ありがとう。なんか汚れてた? 」
「 そんな事はない…。マルシュはいつもキレイだ 」
「 …あ、パパ!! 」
「( くそ、タイミング……! )」
雰囲気に乗って、そのまま行為に移りたかったが…
タイミング良く戻ってきたニンゲンによって、
跳ね返されるように離れていった妻の後頭部の頭突きを食らって、かなり落ち込む。
「( まぁ、水がキレイになったから…。先に飲むか…喉かわいてるし )」
焦ったところで嫌われたくないし…
気分を落ち着かせる為に少し甘めの水を飲み、喉を潤してからご飯の方へと置く。
相変わらず山盛りに置かれたご飯を眺めてから、ニンゲンの方を見上げてる妻へと声を掛ける。
「 この白いのがある。好きだろ? 」
カキ殻と呼ばれるやつを咥えて見せれば、振り返った妻は、すぐにやって来てそれを咥え直しては、一口で食べて笑みを向けてきた。
「 ん!すきっ!今日は沢山あるし、一緒に食べよう? 」
「 あ、あぁ…そうだな…( 可愛い… )」
年上とは思えない無邪気な部分が可愛いと思い、一緒に朝ご飯にする。
何気なく妻が嫌いなエゴマを食べたり、好きなものを渡そうとすれば、そのエゴマが追加で置かれた。
「( いや…俺が好き好んで食べてるわけじゃないからな! )」
「 この黒いの…虫みたいで、やだな… 」
「 ……俺が食うから、マルシュは好きなの食べればいいさ 」
「 じゃ、とうもろこし食べる! 」
他のヒメウズラとは違って、ミルワームや虫も嫌いな妻にとって、この見た目がダニみたいなエゴマは嫌なんだろうな…。
俺は、好きでも嫌いでもないが…。
ゆっくりした食事を終え、クラウンと歌ってるニンゲンは、2時間ほどでこの場を去った。
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