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カウンターアタックを開始した。
全部隊が全速力で前へ駆け出す。その光景は、見ていて痛快だった。僕らも前の集団に置いて行かれない様に付いて行く。
みんなが周りの景色が目に入っていない程に集中している。気持ちは分かる。もし、本陣を切り崩して勝利することができたら、大金星なのだ。
やがて、四頭のスターピープルが先頭の集団に追いつく。流石、名馬だ。最前列にHAKUAIちゃんが見える。僕は、彼女にいいところを見せたいと、愛のボルテージはMAXになっていた。
HAKUAI「敵の本陣はもうすぐだよ! みんな、頑張って!」
気合いが入っている。それもそうだ。ギルドリーダーとして、これ以上のチャンスはもう訪れないだろう。部隊は最高速で相手の本陣を突き崩そうと進む。
敵のプレイヤーが見えて来た。相手は、最大級の礼儀として、みんなで敬礼するアクションを見せている。その光景を見て、僕は泣けてきてしまった。
そして、相手の本陣にまでなだれ込むことに成功した部隊は、ほとんど時間をかけずに、フラッグを勝ち取ることに成功した。
HAKUAI「勝利だよー!!」
一同「「うおおおー!」」
一斉に歓声が挙がった。ギルド「白台の大樹」は、大金星をあげることに成功した。
第二次白台高校の戦争は終わった。
――。
打ち上げが開始された。僕はみんなから祝福の言葉を次々と言われ続けた。
見事にMVPを取った僕は、祝福の賛辞と共に、チームのリーダーになることが確約された。
遂に幹部になれたんだ。
僕はこの何とも言えない気持ちを表現できず、喜びのあまり泣いてしまっていた。
SKY「やった! みんな! ありがとう!」
MILK「よくやったよ、君は」
TOBIUO「お前がいなかったら、うちのギルドはここまで来れなかったよ。ありがとうな」
HAKUAI「これからの新しい幹部にみんな、最大の拍手を!」
パチパチパチ。
おめでとう! SKY!
これでYUUKIに最高の報告ができる。彼は戻って来てくれるだろうか?
そうして、打ち上げが終わり、僕はチームのメンバーと話を少ししてからゲームからログアウトした。
すぐに僕はLINEで悠木に勝利の報告をする。
「YUUKI! ギルド……勝ったよ! 早く帰って来てくれると嬉しい。僕らの戦争はまだこれからだよ」
すぐに中間テストの時期が始まった。僕は、ひたすらに徹夜で勉強をして、何とか課題の範囲をクリアした。
こんな勉強法は始めてだ。僕は元々コツコツとやるタイプで、一夜漬けは得意な方ではない。それでも遅れを取り戻そうとして、必死で勉強した甲斐があってか、内容は何とか頭に入った。これで本番でクリアできるかどうかは分からない。ただ、僕はみんなでやったゲームのことを忘れることはないだろう。それがあるからテストの成績がどうであろうと悔いはないと思う。みんなとの思い出が作れたことを僕は感謝した。
テストが終わり、悠木からメッセージが返って来た。
「SKY! 幹部おめでとう! 今のお前、なんか格好いいよ。それほどお前が言うなら、仏心に戻って来ようかと思うんだ。今日は疲れたから明日アクセスする。これからも宜しくな!」
「ありがとう、YUUKI……仏心で待ってるよ。またメンバーのみんなで狩りをやろうね」
僕は嬉しくなって、Lサイズのピザを注文してしまった。僕の好きなマルゲリータだ。これを今日は一人で食べよう。僕はお腹が痛くなることを覚悟して、ゲームとは違う別のミッションにチャレンジするのであった。
そして案の定、動けなくなった。
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