第一次白台ギルド戦争

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第一次白台ギルド戦争

「日本という国はどうして人との繋がりが薄いのでしょうか?」  そう発言した途端、教室中が静かになった。  みんなが心のどこかできっとそう思っている。だからなんだと思う。興味があるテーマほどみんな真剣になる。それは一時的なものなのかもしれない。たとえそうなのだとしても、誰かがいつかは発言しなくてはならない。僕はそう思っていた。 「何を言い出すかと思えば、そんなテーマ、いきなり解決できるとは思えません」  すると教室中がまたすぐに元のありのままの姿になろうとしていた。  ざわざわと不協和音が鳴り響く。とても耳障りなB G Mである。  兎のように耳が良かった僕には苦痛な時間でしかなかった。  どうしてうちのクラスはこう、ざわつくのが得意なのだろうか? 「理解に苦しむ……」  静かなのが好きな僕にとって、このクラスに当たったのは、果たしてハズレくじを引かされたのであろうか?  僕だって賑やかなのが嫌いな訳ではない。でもその意味はこんな感じの不協和音ではなかった。  もっとこう温かみがあって、みんなが仲良く笑っていられる様な感じのある賑やかさが僕が好きと感じられる雰囲気であった。  そう言ったらわかってもらえるだろうか?  少なくともこんな、下品でふざけている感じのものではなかった。  でも、これは言い過ぎなのだろうか?  みんなが楽しいと思っていればそれはそれでいいのかもしれない。  僕一人だけが協調性がないのかもしれない。  大人しい、いわゆる陰キャと呼ばれる人種には居場所はないのだろうか……?  自分をいじめる自虐的な言動がいつの間にか僕は好きになってしまっていた。  このままではきっと、みんなどこかへ行ってしまう……。  僕が何とかしなくてはいけないのだろうか?  それともいっそのこと放り投げて、行きたい道にそれぞれみんなが行けばいい。  僕はいつの間にかそんな悩みを持つようになってしまっていた。 「僕は、どうやったらソシャゲのガチャで良いキャラが当たるのかが知りたいです!」  それあるよねとクラスの意見が一致する。  ……このままでは、この国はゲームで支配されるようになるのではないか?  パワーバランスが崩れようとしている。  みんなが興味があるジャンルが固定されつつある。  そりゃ政治に興味を持てなどとは僕も言わない。  不可能なことがわかっているからだ。  スマホのゲームのガチャでどのレアキャラが当たるかなんかどうでもいいじゃないか。そのキャラが手元に残る訳でもないのに……。  そのゲームで優位性が付く、他のプレイヤーに自慢できる……とか、思い出に残る……とか言われているけれど数年も経てば飽きが来るか別な新しいゲームが登場して、辞めてしまうこともあるじゃないか。  そしたら残るものは何なのであろう?  これはひょっとしたら、悪魔の罠なんじゃないか。  銀行口座にある貯金を減らそうとする奴らの作戦なのだ。  これを防ぐにはもう、小さな金庫を家に保管するしかない。  デビットカードを持つなというのは不可能かもしれないが……。  まあ、個人的に楽しむ程度ならガチャは僕でも理解はできる。  そんな僕もソシャゲのゲームはやっているし、ガチャも少しは引いている。  でもその理由はやらないと、友達と遊べないからだ。  ……話が少し逸れてしまうくらいこれは社会問題にもなっているのだ。  はっきり言えば僕はこのクラスを変えたかった。  そんなことが僕一人で果たして可能なのであろうか?  大学受験に向けて勉強しなくてはいけない時期に最後にみんなで思い出が作れないだろうか?  コロナ禍であってこういう発想は無意味かもしれなかったけれど、僕は諦めたくはなかった。  ……そうだ。  これを目標にしよう! 「この高校生活三年間という時間内で、何かみんなで一致団結して何か一つのことをやる」  僕はこう思うだけでほんのりと嬉しい気持ちになった。
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