背中のそいつ

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あの日で満足したと思ったが、その後も毎回ではなく、時々思い付いたように同じ事を言ってきた。 あの感覚を思い出すと即答出来ず、だが、断わるのは逃げているようでもあり、何も言わずにいると、それを無言の了承と受け取ったそいつは、数秒の沈黙を待っては同じ事をするようになった。 ただ背中の傷をなぞり、頬を付ける。その後には、何事もなかったかのように、いつも通りのこいつは、未だに何1つ理解出来ない。 背中に引っ付いてる奴は、あの時より少し指が長くなり、頬の位置も少し高くなったようだ。 俺の未知なる感覚への忍耐力も少しずつ成長している。 だが、俺に了承を得てくる時の表情と台詞は変わらない。 毎日振り回され、苦労が絶えず、もう離れようかと考える隙さえも与えないこいつの、あんな顔を見るのは、ちょっとした優越感で悪くはない。 そんな事を考えていると、 「さて!」 急にベッドから飛び降り、床を踏みしめたそいつが、 「今日はどんな変わった店に入ろうか!」 腰に両手を当て、あの時よりもっと自信に満ちた顔で日常に引きずり戻す。 はぁ。仕方がない。 今日も忍耐力への訓練を終えた俺は、変わった店へ行く為の準備を始めた。
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