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呪術師のもとから帰宅した夏帆は、さっそく河童の皿でお香をたき、「レクソッタ~、レクソッタ~」と唱えた。
翌日は雨。
その翌日も雨。
ずっと雨。
夏帆は毎日、河童の皿でお香をたいた。
夏帆のイヤミな上司は毎日、偏頭痛に苦しんだ。
「梅雨でもないのに、毎日雨なんか降りやがって――! クソッタレめっ」
頭部に手を押し当てて悪態をつく上司の姿に、夏帆は卑しい笑みを浮かべる。
「ふふふ、あはは――」
と、笑っていた夏帆の顔色が変わった。
「うっ――」
夏帆は腹を押さえ、トイレに駆け込んだ。
ぐるぐる、ピーピー、土砂のような茶色い水を肛門から垂れ流す。
下痢だ。ピーピーだ。
夏帆は、河童の皿でお香をたくようになってからというもの、下痢でトイレに駆け込む日々を送っていた。
呪術師が言った「体が持たぬ」とはこのこと。
雨乞いをすると、翌日は必ず下痢になるのだ。
「これくらい、あのヤロウの苦しむ姿を拝むためなら、なんでもないわ」
トイレとデスクを行ったり来たりしながらもなんとか仕事を終えた夏帆は、降りしきる雨と灰色の空を恍惚として眺めながら帰宅し、河童の皿でお香をたいた。
「今日も雨、明日も雨。ずっと雨よ。レクソッタ~レクソッタ~。うひひひっ。うっ――」
こうして夏帆は、立派なクソッタレになりましたとさ。
おしまい。
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