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age.22
age.22
僕は高校卒業後、家から通える距離にある大学に進学した。単位を落とすことなく進級し、つい昨日、無事に卒業した。来月からは新社会人として働くことになる。これからも変わらず、ナツキと僕は2人で暮らしていく。
「ナツキ、起きてる?」
深夜1時を過ぎた頃。なかなか眠れなかった僕は、ナツキの部屋にやってきた。彼はベッドに寝転がって、スマートフォンを操作していた。
「……ん? なにー?」
「一緒にねてもいい?」
「……いくつだよ、お前」
「今年で23歳になるはず」
「ガチレスしなくていいんだよ」
ナツキはいつも、僕のわがままを聞いてくれる。今だって、鼻で笑いながらも拒むことなく、僕が入るスペースを開けてくれる。
「……今日はどうした? お前は何かあると布団入り込んでくる」
やっぱり。ナツキは僕のことを理解してくれてる。
布団の中に入り、僕とナツキは向かい合わせになって話し出す。
「僕さ、来月から、もう社会人だよ」
「そうだな。……ホント人間の成長は早いよな。この前まで俺を追いかけるだけのガキだったのに」
「ここまであっという間だった。これからもこうやって、僕だけが年を取っていく。でもナツキは今も昔もこれからも、そのままの姿だ」
「いやいや、お前らよりはずっと遅いけど、ゆっくりだけど、年取ってんの。生きてる時間が違うからそう思うだけだって、前にも言っただろ」
「そうだけど、なんかやっぱり置いて行っちゃうみたいで……寂しいよ」
「は? 何を今更。そんな事分かりきってるだろ」
「そうだけど……」
「……お前が望んでくれるなら、ずっと一緒にいてやる。俺の方から離れたりはしねぇよ。そんで、ずっと側に居続けて、お前の命が尽きる時も傍らにいて看取ってやらんこともない」
震える僕の手を握って、僕を安心させるように、冗談まじりに笑う。ナツキはいつだって僕のほしい言葉をくれる。その言葉に、何度救われてきたことか。
「ナツキ……」
「だーかーらー、早く寝ろ。明日バイトあるんだろ? 起きれなくても知らねぇぞ」
「……うん、わかった。おやすみ」
「ん、それでいい。おやすみ」
育ての親と僕。
手を握り合い眠りにつく姿は、固い絆で繋がれたパートナーのようだった。
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