228人が本棚に入れています
本棚に追加
番犬が牙をむく
その日は突然やってきた。
俺はいつものように、理久が帰ってくるのを部屋の窓から見ていた。
今日も理久が安心して眠れますように。
俺の願いはそれだけ。
理久への淡い恋心は、とうの昔に胸の奥にしまい込んだ。
俺は、理久の1番近くに居られればそれでいい。
理久の笑顔を守ることが俺の幸せだ。
理久は俺の事をよく〝番犬〟と呼ぶ。
上等じゃないか。
理久に寄り付くわるい虫を俺が全員追い払おう。
理久に近づいていいのは俺だけだ。
俺は敵意剥き出しで、理久の周りの男たちを排除してきた。
それはこれからも同じだ。
そう思っていた。
「おい...嘘だろ...」
窓から見える光景は俺の錯覚か?
理久が俺の知らない男に抱き締められている。
この時、俺の中の何かが壊れる音がした。
最初のコメントを投稿しよう!