番犬の邂逅

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番犬の邂逅

しばらくすると、理久の規則正しい寝息が聞こえてきた。 俺の胸にすっぽりとおさまる理久。 俺は理久を優しく抱き締め、頭を撫でた。 そして、理久の寝顔を眺めながら、俺は彼を守ると決めた日のことを思い出していた。 遡ること、十数年前。 俺の隣の家に、理久が引っ越してきた。 その頃の理久は、とにかく可愛らしかった。 俺は不覚にもときめいてしまった。 しかし、その容姿が原因でいじめられることも多かった。 「お前、気持ち悪いんだよ。」 「やめて、痛い!」 俺は理久が同級生に髪の毛を引っ張られている所を目撃した。 そして、居ても立ってもいられず応戦した。 「お前ら、妬みか?格好悪いぞ。」 「なんだ。宗介か。宗介も思うだろ?こいつのこと気持ち悪いって。」 俺は怯えている理久を見た。 そして、同級生に言い放った。 「そんなこと思ったことないね。それよりも、俺の友達傷つけたら許さないから。」 小学生の頃から、俺は背が高く、喧嘩も強かった。 そのせいか同級生たちは、血相を変えて逃げていった。 「もう大丈夫。」 「ありがとう。」 俺は理久に手を差し出した。 「僕たち友達なの?」 「嫌だったか?」 「ううん、嬉しい!!」 この時の理久の笑顔を俺は今でも覚えている。 「よし、決めた。今日から俺が理久のボディーガードになる!」 「宗ちゃんが守ってくれるなら安心だ。」 「宗ちゃん?」 「ん!友達だから。」 この瞬間、番犬が誕生した。
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