チュートリアル!

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チュートリアル!

「マオ、お前は追放とする」 「え…………」 数年前、俺は森で小さな子供を拾った。竜の翼に片方折れたツノをした、どうみても魔物の子供だった。それがマオ。本人がマオ、と舌足らずに名乗ってから、俺はその子供をマオと呼んでいる。 「ど、どうしてですかレインさん。僕、何かおかしなことをしてしまいましたか」 「いや……」 マオは立派な少年となった。値切り術から生活に必要な家事まで全てこの子供には教え込んである。けれど青年とまではいかないマオは、これから先危険な旅路となるパーティに置いておくには危険すぎるのだ。 俺はマオの頭を撫でた。まだ小さくて、片方の手のひらでわしわしと撫でられるくらい。大きい紅の瞳がこちらを泣きそうに見上げてくる。 「大丈夫だ、マオ。生活に必要なもんは全部買ってある。孤児院でも仲良くやれるさ、お前は賢くて、世界一可愛い良い子なんだから」 「レインさん……」 「俺だって離れたくない……でも、これから先はお前には危険すぎる。分かるな?」 歩みを止めるわけにはいかない。日々魔物からの攻撃は激化していて、俺もつい先日家族を殺された身だ。マオのように魔物の子供を斬るのは絶対にゴメンだが、魔王だけを倒せばあるいは侵攻は止まるかもしれないのだ。 「……分かりました。レインさんの言う通り僕、我慢します」 「うん」 マオがふるふると泣きそうな顔で唇を噛んだ。 「だから僕が立派になって、お父さんを超えたら……またパーティに入れてくださいね」 「……分かった」 きっと翌月の潜入で俺は死ぬだろう。それを見越して約束をした。 果たせないのは申し訳ないし、マオが父親の魔物を超えて立派になった姿は見たかった。なんなら結婚式にも参列してやりたかった。 「約束するよ」 可愛いマオと俺は、そうして約束をした──── ……それが全ての間違いだったとは思わずに! 翌月。十二歳のマオの誕生日を魔王城で過ごした俺は、やけに警備の手薄な謁見の間へ殴り込み。 「レインさん! 良かったぁ、間に合った! 僕、立派になりましたよ!」 「…………は?」 「さ、パーティへ入れてください!」 ニッコニコのマオが、先代魔王をボコボコにしている姿を目の当たりにしたのだった。
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