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悲しまないため
ルクセンブルグの郊外にある〈ヴァイデン城〉
ここは、ドイツとの国境にある大きな城下町と大きな城が有名なところだ。
色とりどりの家並みが美しいこの街は、この日は普段の数倍、いや数十倍にも活気づいていた。
家の端から端へと空を切り取るように、自国の国旗が幾つも交差している。
平和を表す白を基調とした美しい国旗には、黄色のピッケルと緑のハーブが色鮮やかに描かれていた。
白は平和、黄色は豊かな鉱山資源、緑は自然との共生という意味を持ち、平和を感じさせる国旗だ。
その裕福な国のヴァイデン城の一室
真紅を貴重とした部屋の中、街を見下ろす一人の少年がいた。
名はレイ
レイにとって今日は特別な日であるのに、気分は浮かばないでいた。
特別な日というのは誕生日のこと。街が活気づいているのもこのせいである
普通だったら誕生日は楽しいはずなのだが、僕は違う。
この国には変なルールがあって、僕は部屋の外に出てはならないのだ
そんなへんてこなルールのせいで僕は『今日の主役』という充実感を感じれずにいた。
「はぁ、誕生日ってみんなはどんな事するんだろう、、、」
レイは届きもしない城下町に向かって静かに呟いた。
不自由という鎖に繋がれた自分の腹の底から巻き出る深い悲しみを仮面で覆い尽くし、レイはいつものように悠然とした態度を取り繕っていた。
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