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そうだ、と僕は思い出す。あの事故のこと、僕を庇ってくれた彼女のことを。
まさか、と思って僕は隣を覗いた。
「言ったでしょう」と由衣は笑った。「案外、幽霊ってのは見た目じゃわかんないもんなんだよ」
「待って」
僕はそうやって彼女を引き留めたが、彼女は僕に手を振った。
「さよなら」
そうやって彼女の方が僕に別れの言葉を告げた。
次の瞬間、由衣はまるで人魚姫が泡になって消えるかのように、その場からいなくなっていた。
どうやら、幽霊が見えていたのは僕の方だったらしい。
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