13人が本棚に入れています
本棚に追加
カケルくんはわたしの手をにぎって、こうばんへむかった。
おまわりさんのおごりで、わたしたちはカツどんを食べた。
わたしはカツどんはじめて食べた。おいしかった。
カツどんを食べたあと、女のおまわりさんが、わたしの体を温かいタオルでふいてくれた。
ベタベタもとれて、さっぱりした。
女のおまわりさんに、ママについてたくさんきかれた。
「ママのこと好き?」
「ママは怒るとコワイ?」
「ママのご飯おいしい?」
他にもたくさんきかれて、わたしは全部しょうじきに話したのに、わたしが「ママは今どこにいるの?」ときいても、その人は「わからないの」と言った。
ほかのことをきいても、わからない人だった。
なんだかわからないけど、頭にきちゃう。
次から次へといろんな人が来て、わたしに話をきいて行ったけど、だれもわたしのしつもんにはこたえてくれなかった。
わたしはプンプンしたきもちのまま、こうばんのすみっこでカケルくんと二人、ふとんにくるまってねむった。
かえる家はもうないのに、『早くかえらなきゃ』と思って、なんども目がさめた。
そして、そのたびにカケルくんを起こしてしまった。
カケルくんはずっと、手をにぎってくれていた。
カケルくんがいてくれてよかったな…と思った。
最初のコメントを投稿しよう!