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 それからも原田は毎朝衿子のすぐそばを通って校舎に向かうし、そのことに衿子も触れようとしない。  だからある日、春香はある作戦を考えた。いつもの立ち位置とは反対側に立ってみたのだ。普段は衿子の左隣に立つのに、今日はわざと右隣に立った。  そしてその人が現れるはずの正門まで、普段と変わらない様子で歩いていく。  そして正門にさしかかった時、とうとう原田の姿が目に入った。真正面から歩いてきた原田は、春香と衿子の位置が違うことに気付いたようで、驚いたように目を見開く。  この反応、やっぱりわざと衿ちゃんのそばを歩いていたんだ……!  しかし彼は慌てる様子もなく、いつもより足取りを早くして、衿子の左側を自然に通り抜けようとしたのだ。  春香の隣に誰かがいたわけじゃない。だとするとこの人物はあえて衿子の隣を歩こうとしていたとしか思えない。  春香は姉の右隣に立ち、衿子の横を歩いてきた原田に焦点を合わせると、眉間に皺を寄せてキッと睨みつける。  その瞬間、春香と原田の視線が合った。  原田は目を丸くしながら春香を見ると、何故か吹き出したのだ。  な、何こいつ! めちゃくちゃ失礼な奴じゃない⁈  睨みつけたのは春香なのに、悔しくてつい自分からプイッと顔を背ける。 「春ちゃん? どうしたの?」  春香の様子がおかしいことに気付いた衿子が、不思議そうに顔を覗き込んだ。 「な、なんでもない! 早く行こう!」  そう言って姉の手を取った時だった。衿子と原田の視線が合ったかと思うと、誰にもわからないように二人が小さく微笑み合ったのを春香は見逃さなかった。  まるで何かで頭を殴られたような衝撃を受けた春香は、ここ最近感じていた違和感の正体が分かった気がした。  二人を引き剥がすように姉の手を引っ張ると、校舎までの坂道を勢いよく登り切った。
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