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原田のことが気になって仕方なかった春香は、姉にバレないよう、こっそりと彼について調べ始めた。
原田洸哉、成績はいつも上位、園芸部員。無口でほとんど人とは関わらないタイプで、何を考えているのかわからないというのが、クラスメイトの反応だった。
見た目だけで決めつけるのはいけないってわかっている。でもあんなピアスをたくさんつけて、ちょっとヤンキーっぽい感じもするのに、園芸部というのは意外だった。
放課後は園芸部顧問の先生と裏庭にある温室にいるという情報を得た春香は、姉には何も言わずに裏庭へと向かう。
渡り廊下を歩きながら、二号館と三号館の間にある細い通路を曲がり、土の上にかろうじて置いてあるコンクリートブロックの上をジャンプしていく。
こっちまで来るのは初めて。なんて辺鄙な所なのーーそう思いながら、春香は温室を探す。
コンクリートブロックの終着点に到着すると、目の前にはいくつもの花壇と畑、そしてガラス張りの温室が姿を現した。
「ここが温室……」
中にはたくさんの植物が見えたが、人影までは確認出来ない。
春香は大きく息を吐くと、意を決して温室の入り口へと向かう。
どんな人かは知らないけど、衿ちゃんとのことを聞き出してやるんだから! それに……もし私が思っている通りだったら、私が衿ちゃんを守るって決めてるの!
鼻を鳴らし、開け放たれたままの扉から中を覗き込む。もわっと熱い空気が外へと流れ出し、春香は思わず目を瞑った。
「やだっ、あっつー!」
そう言いながら目を開けた春香は、驚きのあまり目を見開く。ずっと探していたはずの原田が、なんと目の前に立ちはだかっていたのだ。
「うわっ、な、何よ、いきなり!」
「それはこっちのセリフだよ。こんなところに何の用?」
いつもと変わらず髪は明るい茶色だし、耳にはピアスがたくさん付いている。だけどメガネをかけている姿は初めて見た。ヤンキーっぽいのに知的に見えるなんて不思議過ぎる。
「あ、あなたに話があってきたの!」
「話?」
原田は怪訝そうに春香をじっと見る。負けそうになる心を、春香は何とか気力で奮い立たせた。
「そう。衿ちゃんのこと」
春香がそう口にした瞬間、原田はようやく彼女のことを思い出したように唇の端を上げた。
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