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#8
サチエが踵を返して逃げるのと、
数十匹の猫が鋭い鳴き声をあげ
一斉に襲って来たのは、
ほぼ同時だった。
わずかに開いたドアからサチエが外に飛び出す。
助かったと思った瞬間だった。
自分の足が、敷かれた雑草を踏んだ。
しまった!と思ったが、遅かった。
雑草を踏んだサチエの体が
地面の下に、スッと消えた。
真っ暗で何も見えない穴の中、
サチエは自分の右手に違和感を感じていた。
握った包丁が
何かに突き刺ささっていたからだ。
正夫のうめくような声が、暗い穴の中でした。
「サ、サチエさん。刺さって、ます」
穴の外、
灯りのついた家々からは
長寿番組のアニメのテーマソングが、
楽しげに流れていた。
【了】
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