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エレベーターを待つ時間ももどかしく、全力で非常階段を駆け下りた。
ぜえぜえと、肩で息をしながら彼女の元へと駆け寄ると、彼女は突然、何かに弾かれたように顔を上げた。
「あー、びっくりした! イノシシでも突進してくるのかと思った!」
そう言って見開かれた彼女の目は、涙に濡れて真っ赤に腫れあがっていたが、当の本人は、思いの外元気そうだ。
なんのことはない、彼女はただそこで、男に裏切られた絶望に、打ちひしがれていたらしかった。
「私の親友と浮気してたの。さっき白状しやがった」
彼女はそう言って、ずるると盛大に鼻をすすった。
話を聞きながら、ぼくはなんだか間抜けな感じで、その場に立ち尽くすしかなかった。
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