2人が本棚に入れています
本棚に追加
笑い過ぎたせいか、目のふちにはまた涙が滲み始めてきたようだ。
彼女はそれを、人差し指でぐいと拭って立ち上がり、まっすぐにぼくを見た。
こうして向き合ってみると、ハイヒールを履いている彼女よりも、ぼくの身長のほうが少し高い。
意外だった。
「ありがとう、慰めてくれたんだよね? 嬉しかったの」
そう言って彼女は右手を差し出してくる。
まるで子供みたいに華奢なその手を、ぼくはぎゅっと握り返す。
その瞬間、ほんの少しだけ、ぼくは大人になれたような気がしたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!