近所迷惑な彼女

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 笑い過ぎたせいか、目のふちにはまた涙が滲み始めてきたようだ。  彼女はそれを、人差し指でぐいと拭って立ち上がり、まっすぐにぼくを見た。  こうして向き合ってみると、ハイヒールを履いている彼女よりも、ぼくの身長のほうが少し高い。  意外だった。 「ありがとう、慰めてくれたんだよね? 嬉しかったの」  そう言って彼女は右手を差し出してくる。  まるで子供みたいに華奢なその手を、ぼくはぎゅっと握り返す。  その瞬間、ほんの少しだけ、ぼくは大人になれたような気がしたのだった。
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