近所迷惑な彼女

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 その夜、ぼくは数学の過去問と向き合っていた。  どうにも結論に辿り着かない証明問題と、自分の頭の回転の鈍さに嫌気が差して、シャーペンを問題用紙に叩きつけてから窓を開けた。  深夜1時の静寂と冬の気配を孕んだ夜気が、窓の隙間からしゅるしゅると流れ込み、部屋に満ちる鬱屈した空気が浄化されていく。  地上7階に位置するぼくの部屋からは、薄明るいマンションのエントランスが見下ろせる。  そこに停車したタクシーから千鳥足で降りてくる住人の姿を、見るともなしに眺めたりしながら、火照った脳を冷やすように、ぼくはしばらくの間ぼんやりとしていた。
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