立花ヒイコ、京都に転勤する

牛肉は贅沢品！？

　立花ヒイコ、近頃、習得したことがある。
　それは、食材の値段把握である。

　最初は高いのか安いのか分からなかった食材のお値段も、今やメーカーごとに細分化されたデータが頭にたたき込まれている。これは無駄に貧乏性な母の影響と言えよう。

　そこで、気づいたことがある。
　――牛肉、案外高くない。
　こま肉に限って言えば、安売りの日は豚肉より安かったりするのだ。

　また、気づいた。
　――牛肉の売り場スペース、大きくない！？

　ヒイコが利用するスーパーでは常に、焼き肉用の牛肉たちが、大きなワゴンをどどんと占領しているのだ。
　国産から外国産まで、さまざまな部位が並べられている。

　――それだけ需要があるってことだよね……。京都人リッチやな～。

　立花ヒイコ調べだが、関西人は関東人より牛肉をよく食べるらしい。京都人は特にすき焼きを食す頻度が高いとか。

　関東生まれ、関東育ちのヒイコは、牛肉と言えば、贅沢品。特別な品なのだ。（←あくまでも、立花家の感覚である）
　スーパーの牛肉売り場などそもそも目に入らなかった。

　しかし、ある日の仕事帰り、スーパーに寄ったヒイコは牛肉売り場で足を止めた。

　――広告の品・焼き肉用牛肉が３０％オフ……しかも国産……や、安い！！！

　今日は誕生日でもないし、何かを成し遂げた記念日でもない。しかし、超お買い得な牛肉がそこにある。ヒイコは一瞬迷ったが、カゴにブツを入れた。

　＊＊＊

　築○十年の我が城に帰って、じゅわっと肉を焼くヒイコ。

　――牛肉の何が良いって、豚肉と違って火が通ったか気にしなくていいとこだよね……って違うか。

　ひとりボケツッコミを繰り広げながら、ご機嫌である。

　――はあっ……牛肉の焼いた香り……最高じゃん！！　京都のスーパー、万歳！！

　こうして味を占めたヒイコは、夕方に値引きされた牛肉を買い続けることになるのであった。