これってせこい!?

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これってせこい!?

 みなさんは、自分のことをせこいと思ったことはあるだろうか?  少なからず、誰もが少しは感じたことがあるであろうこの感情……立花ヒイコは京都に来てひしひしと感じていた。  発端はゴミ袋である。  京都市はゴミ袋が有料だ。  大きさによって値段は異なるが、ヒイコが使っている燃えるゴミの袋は一枚あたり30円。10枚セットで売っているから300円で購入する。  けっこう高いな……それがヒイコの感想だった。    いや、ゴミを捨てさせていただくのだから、お金を払うのは納得だったのだが……ヒイコがいた関東の市はゴミ袋に指定はなく、任意のものだった。  だからなのか、妙に高く感じてしまう。  ちなみに資源ゴミの袋も有料で、こっちはけっこうかさばる。  ペットボトル、コンビニ弁当の容器などなど、ひとり暮らしでも大きな袋が必要だった。  あるとき、ヒイコは気づいてしまった。  会社にゴミ箱があることを――  燃えるゴミ、プラ、ペットボトル、缶。  分別されたゴミ箱がそれぞれ、大きな口を開けて待っているではないか!?  なるべく会社でゴミを捨てよう。  立花ヒイコ、そんな剣呑な考えが頭に浮かぶ。  会社の自販機で買ったお茶を飲みきれずに家に持ち帰った。  いつもなら、空になったペットボトルは市の定めた日に資源ゴミとして出していたが……会社に持っていけばいいんだYO!  仕事するときに必要だったものは会社で捨てればいいんだYO!  なんにも悪いことはしていないYO!  自身のせこさをごまかすために、なぜかラップ調になるヒイコ。  さて、この女、せこいが度胸はない。  周囲に人がいないことを確認し、カバンから空のペットボトルを取り出す。  もう一度、周囲を見渡し、誰にも見られていないことを確認した。  そして――ヒイコにしては高速の動きでペットボトルをゴミ袋に放り込んだ。   一週間と続かなかった。なぜか湧き上がる罪悪感。  悪いことなのかはよく分からないが、せこいことに間違いなかった。  自身の神経がすり減るより、お金を払ったほうが安いと気づいた。    そして、月日は流れ――  ヒイコは発見した。  いつも行くスーパーの入り口横に、空のペットボトルを持ったお客さんがいつもいることに。  彼らを観察していると、彼らはペットボトルをそこに捨てているではないか!?  なんなんだ、あのゴミ箱は……。  そして気づいた。  スーパーでリサイクルの一環として、資源ゴミの回収をしていることに。  立花ヒイコ、思わずほくそ笑んでいた。  やった! 正当に無料で出せる場所を見つけた!    それからというもの、ペットボトルやプラ容器を溜めては、ご丁寧にスーパーに持ち運ぶヒイコなのであった。
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