クリスマスだから

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クリスマスだから

 日曜日のクリスマスイブ、立花ヒイコはいつもどおりスーパーに買い物に行った。  今日は朝からおはぎが食べたい気分だった。  行きつけのスーパーのおはぎは侮れない。  京都には無数の和菓子屋があるのに、最近のヒイコのお気に入りはこのスーパーのおはぎなのだ。  おはぎを食べるなら、さば寿司も食べたい。  こちらもおはぎ同様、京都には有名なさば寿司店がたくさんあるが、このスーパーのさば寿司は侮れない。  スーパーのお惣菜、あっぱれである。  さて、お寿司コーナーでさば寿司を探すが……ない。  もう一周するもない……。  これはもう聞いてみるしかない。  ヒイコは他のパック詰めされた寿司を並べる店員さんに尋ねてみた。 「あのう……さば寿司はありますか」    すると店員さん、誰かに聞くためか奥に一回入ってから申し訳なさそうな顔をして戻って来た。 「すいません。今日はさば寿司はないみたいです」 「あっ……わかりました」  残念だが仕方ない。  ヒイコ、別のお寿司を物色したあと、おはぎを探しにお惣菜コーナーに向かった。  しかし、おはぎの姿が見当たらない。  もう二周、探してみても見当たらない。  またしても、お惣菜コーナーの店員さんを捕まえて、聞いてみた。  すると、今度は即答された。 「今日はクリスマスなんで、おはぎは置いてないんです」  ――なんですって!? クリスマスないのっ!?  ヒイコは呆然と立ちすくむ。そして、気づいた。  ――あれ、もしかして……鯖寿司も、ないの?  チキンやピザが所狭しと並べられたお惣菜コーナーを見て、ヒイコの疑問は確信に変わった。  ――なるほど。世間様はクリスマスイブにおはぎやさば寿司を食べないんだ。  子どもの頃は自分もクリスマスにはチキンやケーキを楽しみにしていたな、と時の経過をしみじみ感じたのであった。 
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