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そこじゃない
立花ヒイコ、コーヒーが好きである。
しかし、体が渋い反応を示す。
カフェインが強いせいなのか、すぐにお腹を下してしまいがちだ。
特に空きっ腹にコーヒー、一番危ない。
好きなのに飲めない、悲しみである。
ある寒い昼下がり。
お昼ご飯を買いに、セブンイレブンに立ち寄ったヒイコがふと視線を向けた先は……
レジ横、少し奥まったところにあるコーヒーマシーンだ。
マシーンの前には、おばさまがお一人。
どの種類にしようか迷っておられるご様子だ。
――いいなあ。たまには飲んじゃおうかな、セブンのカフェラテ好きなんだよな。
とヒイコが脳内でぼやいていると、おばさま、カバンから財布を取り出した。
――おっ、これは……
ヒイコが見守っていると、おばさまは財布から小銭を取り出してマシーンの前でおろおろし始めた。
――間違いない!
ヒイコは、そっと声をかけた。
「あのお……このマシーンはお金を入れるところがなくて。レジでお会計するんです」
すると、おばさま、恥ずかしそうに目を細めた。
「あら、いやだ。初めて買うものだから分からなかったわ」
「ですよね。ここにお金入れたくなっちゃいますよね」
ヒイコ、わかりみである。
自販機風のマシーン、実際にありますものね。
おばさまは無事にレジで会計を済ませ、ホットコーヒーをゲットして帰って行った。
そこで、ヒイコ、ふと思った。
――アイスの場合は、先に冷凍ケースからカップを取るんですよって教えてあげればよかったあ……
セブンのコーヒーを気に入ったおばさまが、夏、上手にアイスコーヒーを買えますように、と願うヒイコなのであった。
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