そして二年目の京都

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そして二年目の京都

 言葉どおり三寒四温を経て、京都にようやく春が来た。  二十度を超える温かな陽気に、ソメイヨシノも一気に開花した。  京都の春は、賑やかなことこの上ない。  街中に花が咲いて華やいで……それだけでない。  観光客の多さはにヒイコは驚いた。  去年の桜シーズンは、自分の引越しやらで精一杯で気がつかなかったが、この時期の京都は一年で一番観光客が多くなるようだ。  街を歩けば、ここは海外か!?と錯覚するほど、日本語が聞こえない。  歩道は人で溢れ、飲食店も繁盛しているようだ。  ――確かに、紅葉はある程度長期だけど、ソメイヨシノは一週間くらいだからねえ……。  みんなサクラの開花目がけてやってくるのである。  ――旅行しなくても、通勤路でお花見できるって、お得かも。  桜の木の下を得意顔で歩いていたヒイコであったが、突如声をかけられた。   「スミマセン。コンビニ……ドコ」  声の主は、青い瞳を持ったおじさま。  ヒイコ、一気に心臓が飛び上がった。 「あ~、あ~」  ヒイコ、パニックである。  ――そんな瞳で見つめられても…… 「え~、え~っっと」  ヒイコ、コンビニの場所をやっと思い出す。  ――その角を右に曲がる……右ってなんだっけ、レフト……じゃなくて……ああ…… 「あっ! ライト!」  すると、おじさまにこっと笑顔になった。 「右、デスカ。アリガト」 「……い、いえ。どうも……」  ――ひええっ。通じた。ってか右って日本語言ってたし。  それにしても、とヒイコは思う。  ――観光客に道を聞かれるくらい、地元民になったんだなあ。  やたら、感慨深いヒイコなのであった。  立花ヒイコ、二年目の京都の春が始まった。
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