噂の真相!?

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噂の真相!?

 関西人はキツいという噂、はたして本当なのだろうか。  かく言うヒイコ、転勤前はけっこうビビっていた。  関西弁はやっぱり強く聞こえるし、テレビで見る関西の芸人さんたちはちょっと怖そうに思えたからだ。  さて、真相はいかに……?  実際一年暮らしてみると、声が大きい人が多い気がする。  あと、ヒイコ個人としては、交通マナーで小言を言われたことはあるし、すれ違いざまにぶつかってどやされたこともある。  はて……これは関西だからなのか、と考えるとそうでもない、とヒイコは思った。  関東で横断歩道を歩いていたにもかかわらず、車にひかれかけ、運転手に怒鳴られたことは忘れない。  結局は、個人差なのさ――と思っていた矢先。  いつもは全国チェーンのスーパーを利用するヒイコだが、この日は、地元に根付いたこじんまりとしたスーパーに出向いていた。  レジを待っていると、袋詰めするカウンターでおじいさんが年配のおばさんに向かって大きな声を上げている。  狭いし、混んでいるし、どうやらおばさんがおじいさんにとって邪魔だったようだ。  おばさんはそそくさと袋詰めを終え、カウンターを離れると、その後ろ姿に向かっておじいさんが吠えた。 「ババアがっ!」  店内に鳴り響く罵声。  誰もがふたりを見ていただろう。   ヒイコ、険悪なムードに心臓が縮み上がった。  ――ああ、おばさんが可哀想だよ……。  と同情した刹那、おばさん、おじいさんに振り向いて怒鳴った。 「この、ジジイッ!!!」  ――ひっ、ひえええええええ。強い、強いよ、おばさんもっ!  心配ご無用だったのである。  おばさんが去ると、おじいさんBが登場した。  おじいさんA(さっきのおじいさんをAとしよう)の隣でやり取りを傍観していた人だ。   「おい、カゴ、片付けてけよ!」  おじいさんBがAに向かって声を上げる。 「あああっ!?」  おじいさんAがBに向かって詰め寄る。  ――ひいえええええええっ! ラウンド2が始まってもうたっ。  しかもここは男同士手加減なしなのか、おじいさんAがBに体当たりした。  まるで、子どもの押しくらまんじゅうである。  おじいさんBも負けていない。おじいさんAに体ごとぶつかっていく。 「んだ、このやろう!」 「んがあっ!」  ――ああああっ、やばいよ、やばいよ。警察案件だよお。  ヒイコ、再び心臓が縮み上がった。  すると、店員のお兄ちゃんがさっとふたりの間に入った。 「お客様、落ち着いてください」  ふたりのおじいさんはにらみ合った末、スーパーを出て行った……。   ヒイコ、買い物を終えてスーパーを出ようとしたとき、  ――ああ、外でやり合ってるんだろうな……  とドキドキしていた。のだが、スーパーの外は平和であった。  ――ふたりのおじいさん、いない。もう終わった系?  なるほど、気に入らないことをすぐに口や行動に移す分、案外さっぱりしているのかもしれない。  ここでヒイコ思い直す。  やっぱり、あの噂は本当なのではないだろうか。  県民性的なものはありそうな気がしてならないヒイコなのであった。  ※あくまでもヒイコ個人の感想であります(_ _)
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