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永遠に……
ヒイコ、地元のスーパーに通う頻度が高くなった。
理由は、日曜日に野菜と納豆が安くなるから。
全ての食材は揃わないけれど、掘り出し物はあったりする。
新年度だからか、今なら新規会員登録が無料でできるという。
その上、クーポン券までいただけるという。
『無料とお得』が好きなヒイコ、もちろん入会した。
手に入れたクーポンは50円off券、月めくり式のカレンダーにくっついていた。
毎月のカレンダーの下に切り取り線でくっついている。
例えば、4月のページなら、下に4月1週目のクーポン、2週目のクーポンといった具合に。
切り取って、レジで出せばよいらしい。
デジタルなご時世だが、原始的なこの感じ、嫌いじゃない。
さて、会計時にさっそくクーポン券を提出した。
すると……
「入会当日はお使いいただけません」
「あ、そうなんですね」
ヒイコ、引き下がってクーポン券を財布にしまう。
翌週の日曜日。
再び、例のスーパーを訪れた。
――クーポン券、出し忘れないようにしないと。
ヒイコ、レジ前でいそいそとクーポン券を財布から取り出した。
「これ、お願いします」
しかし店員さん、クーポン券を受け取ってくれない。
「すみません。今日はポイント三倍デーでして、クーポン券がご使用いただけない日となっております」
「え……」
――そう、ですか。
まあ、仕方ない。クーポン券は再び財布の中にしまわれた。
そのとき、店内ののぼりがふと目に入る。
『毎週土曜日はポイント二倍デー、日曜日は三倍デー」
――えっと……ってことは毎週土日はクーポン券が使えないってこと？
ヒイコ、このスーパーには休みの日にしか来たことがない。
平日はお惣菜やお菓子が充実している大手チェーンスーパーに行くのだ。
――まあ、まあ。平日に来るときもあるさ。
そんなこんなで、ついにその日がやってきた。
なんとなく気が向いて、帰り道を変えてみたら、例のスーパーの前を通りかかったのだ。
ヒイコはアジフライとポテトサラダをカゴに入れて、レジに向かった。
――クーポン券、忘れないよっと。
今日は平日、店内にポイント倍増デーののばりは出ていない。
「これ、お願いします」
ヒイコ、若干どや顔でクーポン券を差し出した。
しかし……店員さん、カゴに目を落とす。
「あの……クーポン券は2000円以上お買い上げの場合ご利用いただけるものでして」
――えっ……。
ヒイコ、改めてクーポン券を見てみる。
――はっ、確かに※印に書いてあるYOU！
さすがに老眼はまだ始まっていないのに、目を細めて、こすって、クーポン券を凝視するヒイコであった。
そうして見ると、二つ目の※印に、ポイント倍増日はお使いいただけませんとも書いてあった。
――ってか、このクーポン、使う日は永遠に来ないんじゃ？
この日以来、ヒイコがカレンダーからクーポン券をもぎることはなくなるのであった。
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