レディのたしなみ

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レディのたしなみ

 GW真っ只中。  休みというのはどうしてこうも早く過ぎ去っていくのだろうか。  ヒイコは青空の下、思いふけっていた。  ――もう半分終わっちゃったよう……    なぜかしら、後半戦になった途端、急に焦ってくるのだった。  さて、京都の連休はそう甘くない。  観光地は人で溢れているという。  直接混雑を見たわけではない。テレビニュースがそう言っていた。  だから、ヒイコは大人しくいつもの休日を過ごすことに徹している。  ただ、ひとつ、予定を入れていた。  美容室である。    何を隠そう、立花ヒイコ。美容室には滅多に行かない。  五か月に一回……いや、ボケッとしていると年に二回なんてこともあったりなかったり……。  今回は実に五か月ぶりの美容室となる。  先日、会社でこんなことがあった。  鏡に映った髪の毛がものすごくにパサついて見えたヒイコ。  レディとして、さすがに不味いと思い立ち、昼休み、美容室に予約の電話をかけた。    昼休みが終わると、草刈先輩がそっとヒイコに何か渡してきた。 「立花さん、落ちてましたよ」  それは美容室のカードだった。  さっき電話するときに財布から出して、落としてしまったようだ。  ――なんとっ!!!  カードには前回の来店日が記載されている。  これは痛恨のミス!    ――美容室に半年も行ってない女だと思われるう……。よりによってステキ女子の草刈先輩に拾われるとは!  一気に顔が熱くなったヒイコなのであった。  そんなこんながあり、今回は髪を染めようと決意している。  なぜかって……  ――髪染めすれば、さすがの私もプリンが気になっちゃうから……必然的に美容室に行く頻度が高くなるでしょう。  だそうだ。  まさか、美容室に行く理由をつくるために、髪を染める女子がいるとは、草刈先輩は思いもしないだろう。  何事にも腰が重いヒイコなのであった。
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