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今さら！？
近頃、腰が痛いヒイコである。
寝具を新調すべきなのだろうが、大きい家具の処分というのはなかなかに厄介なもので。
ああだこうだ言っているうちに、数か月が過ぎていた。
そしたら、今度は肩こり、首こりまでひどくなってきた。
「ああ～……」
職場で、自分の肩をしきりに揉むヒイコに、草刈先輩は涼しい顔である。
「肩こりですか？」
「はい……最近ひどくて。草刈先輩はそういうのなさそうですよね」
草刈先輩はいつでも背筋がピンと伸びていて、見ているこっちまで、つられてピンと伸びてしまうほどだ。
と言っても、つられるのはほんの一瞬。
ヒイコの場合、ピンとした数秒後には背中がたるんでしまう。
「そうですねえ……確かに肩こりはあまりないかもしれません」
さすが、である。
「ああ、そうそう。ヨガはいかがですか？」
「ヨ、ヨガですか？」
そんなおしゃれなスポーツ、もちろんヒイコは無縁である。
そもそもスポーツなのかさえ不明だ。
「ええ。肩こりしないのは、ヨガをやっているおかげかもしれません」
「はあ。でも、通うのはちょっと……」
「面倒くさい」とはっきり言えず口ごもるヒイコに、草刈先輩は全てを悟ったように微笑んだ。
「大丈夫。今どき、YouTubeでいくらでもできますよ」
――なるほど、その手があったか。
そんなやり取りを経て、ヒイコの自宅ヨガは決行された。
まずは初心者でもできそうな10分動画が手本だ。
ヨガというより、ストレッチのような動きが続く。
「うっ……」
ヒイコ、ときおり苦渋の声がもれる。
みなさんお察しのとおり、立花ヒイコは体が硬い。
簡単な動きでも、動画の先生のようにはいかないのだ。
にしても、なにやらおかしい。
『右手を上げて、そのまま後ろに下ろしますー。上半身も一緒に右側にねじれまーす』
――うん、ねじれるよ……ねじれるけれど、手が床につかんのです、先生……。
先生を見ると、手のひらがぺたりとヨガマットについている。
しかし、ヒイコはといえば、指先が触れるかどうかというところだ。
いくつかの動きを経て、ヒイコ、だんだんと気づいてきた。
どうやら自分は、腕が短いらしい、ということに――
ヒイコ、驚愕である。
――なんと、胴長・短足に加え、腕まで短かったとは……！
三十うん年生きてきて、ヨガによって、自分の身体的特徴を新たに見つけることになるとは思いもよらなかった。
どうやら、腕が短いことを、『短腕』たんわん、と呼ぶらしい。
なんだかトホホな気分になった夜であった。
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