kamogawa zoo

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 立花ヒイコ、コンビニに行くついでにちょっくら散歩に出かけた。  大家さんに、賀茂川の桜が見頃だと教えてもらったのだ。今年はとにかく開花が早いらしい。  ちなみにアパートの側にある川は「賀茂川」と表記され、川床や均等に座るカップルで有名なあの川は「鴨川」と書くのが一般的らしい。  北西から流れてくる「賀茂川」と北東から流れてくる「高野川」が合流して「鴨川」と名称を変えるのだ。  細い路地を歩いて賀茂川の河川敷に降り立つと、両岸に桜が咲いていた。  ――わあお……イッツ ビューティフォー……  英語は得意ではないが、芝生に寝転ぶ北欧系外国人に感化されるヒイコ。  顔を上げると、空が大きくて広くて綺麗に見えて、ヒイコは深呼吸したくなった。  自分でも気づかないうちに、ずっと緊張してたようだ。すーっと息を吸い込み、吐き出す。    ――気持ち良い場所……  広い空を仰いでいると、ほんの少し心が解放される気がした。  犬の散歩をしている人、ジョギングをしている人、親子でお散歩している人……賀茂川はまさに市民の憩いの場であった。  ――京都、いいところかもしれないな。  トンビがピーヒョロオと空高く浮遊し、木々ではスズメがさえずり、川ではカモが仲良くぷかぷか泳いでい……  ――!!! あれは何っ? フラミンゴ……?  ヒイコの目を釘付けにしたのは、もちろんフラミンゴではない。フラミンゴなみに大きいが、それは河川敷にたたずむアオサギだった。体長1メートルは優に越えるだろう。  ――あの大きさヤバくない!? っていうか、あんな生き物、こんなところにフツウにいるもの!?     さらに目をこらして周囲を見ると、川を泳ぐカワウソのような生き物を発見した。  ――っ!!!! なんですか、あの生物は???  その未確認生命体は土手のほうに泳いでいる。  好奇心から、ヒイコは川ぎりぎりまで近づいて目を細める。  それはカワウソではなかった。もっとずんぐり巨大で、カピバラのような顔をして、でもネズミのように尻尾は長くて……  ――なんじゃ、あれは……。ここは動物園か!?  京都に来て初日にして、カルチャーショックを受けるヒイコのであった。  ※ ヒイコが目撃した動物は、ヌートリアという生物でした。
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