あなただけのもの

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 料理は次々に運ばれてきてそのどれもが美味しくて僕たちは浮かれたように味わった。  最後のデザートを食べながら倫也はヒソリと言った。 「ずっと前から光琉さんと一緒に暮らしたいなって思ってました。でもおれはまだ学生で稼ぎもないのにそんな無責任なことは言えないし。早く仕事したいなって、就職が決まったら言おうって決めてました」 「その割に爛れた生活していたようだけど」  ジトリと睨むとウっと胸を抑えて痛がった。 「それを言われると……。だけど光琉さんと出会ってからは一切してないですよ。全部断っていたし。これはほんとに、誓って言えます。光琉さんだけです」 「どうかな」 「信用無いですよね。でもこれからは嫌って言うほど光琉さんだけが好きだってわかってもらうので」  ニヤリと笑われて、今朝の言葉を思い出した。じんわりと上がる体温に気がついたのか倫也は足をすり寄せて両足の間に滑り込ませた。スーツ越しだと言うのに倫也の肌を感じるようだ。 「部屋に行きましょう?」 「部屋って、」 「取ってるに決まってるでしょう。家まで我慢できるはずがない」  なんつーベタなことを、と思ったけど僕こそ切羽詰まったように触れたくて仕方ない。  今まで優雅に食事をしていたくせに急くように支払いを済ませてエレベーターに乗った。  ドアが閉まるのを待てないくらいすぐにキスを交わす。強く抱きしめあって口内を探り合う。どこにも隙間がないくらい近寄りたい。 「んっ、ふ」  甘い声が漏れてしまう。それに浮かされたように倫也も呻いた。 「ヤバイ。部屋までもつかな」  こんなところで始めるわけにはいかないので焦れるように数字を追った。軽やかなベルの音とともにドアが開くともつれるように廊下を進んだ。  興奮しすぎているのかドアのカギを開ける手が震えている。珍しく倫也が焦っているのがさらに僕を興奮させた。 「早く」という自分の声が呆れるほど甘く掠れている。  倫也は舌打ちをしながらドアを開けると転がる様に中に入り込んだ。靴を脱ぎ、スーツを床に落としながらベッドへと急ぐ。  ダイブするようにベッドに転がり込むと倫也は僕のネクタイをむしり取り、すぐに首筋に吸い付いた。 「あっ」 「光琉さんの匂いだ……たまんない」  破く勢いでワイシャツを剥ぎ取りズボンを蹴り落とした。  肌を露わにすると嵐が止んだかのように素肌を重ねた。互いの脈打つ心臓を同期させるようにピタリとくっつき合う。   「光琉さん」と倫也が僕の名前を呼ぶ。 「倫也」と僕も呼ぶ。  声が2人の間で響き、それを合図のように顔を上げ唇をふれ合わせた。最初は啄むように。戯れるように舌をくっつけて粘膜を擦り合わせた。 「シャワーあびてないけど」 「そんなの待てるか」  余裕がなくなると乱暴になる倫也の口調にゾクリとした。普段の澄ましたように丁寧に話すのも好きだけど、こうやって素になられるのもたまらない。  深く口づける倫也の髪に指を絡ませた。気持ちいいのが伝わる様にクシャクシャにすると顔を上げて鼻先をくっつける。 「そうやって髪を触られるの気持ちいい」 「こうやって?」とさらにグシャグシャにしたら「こら」と噛みつかれた。 「大丈夫だよ、倫也は普段もイケメンだけど髪が乱れたってかっこいいから」 「光琉さん、おれのことかっこいいって思ってくれてるの?」 「そりゃそうだよ。最初はなんでこんなイケメンが一緒に寝てるんだってビックリしたんだから」  優一に失恋して泣きついたバーで倫也に出会った。遠い昔の様だけどまだ数か月しかたってない。こんなに環境も気持ちも変わるなんて想像していなかった。 「ずっと見てておれのこと」  甘えるように鼻先をすり寄せて倫也が言う。 「おれだけを好きでいてね」 「それは僕のセリフ」    モテる倫也にはこれからもたくさんの女が寄ってくるだろう。扱いのうまいこいつにいいように惚れて暴走する女もいるかもしれない。  だけど倫也は僕だけの男だ。  独占するように頭を抱えて引き寄せた。大人しく寄ってくる倫也はそのまま僕の胸の先端を食む。鋭い電流のようなものが流れた。 「んっ」 「ここも可愛い」 「あ、っ、や」 「ヤじゃないでしょ。気持ちいい顔してる」  強く吸われて、歯の間でしごかれて。その度快楽の回線が脊髄を通って全身に広がっていく。 「いや、あっ」 「赤く腫れてきた」  乳首の存在の意味を今まで感じたことがなかったけど、こんな風に使うものなんだと初めて知った日。倫也が与えてくれた快感だけを覚えて性感のスイッチを入れていく。    まだ触れられてもいない下半身はじっとりと下着を濡らし始めている。傍らにある倫也だって同じような状況だ。  胸への刺激に喘ぎながら先を欲しがって倫也の性器に触れて揉んだ。張り詰めた肉の塊が下着を押し上げ今にも飛び出そうとしている。 「やらしい。欲しくなってきた?」 「んっ。倫也、の、熱い……」  下着の上からでもわかる熱量。竿の形でこすると倫也も小さく喘ぐ。 「光琉さ、んっ」 「気持ちいい?」 「気持ちいいよ。もっと触って」  キスをしながら互いの性器を触りあっていると二人の間の湿度が上がっていく。  直に触りたくて下着を剥ぎ取った。ベッドの下に投げ落として腹につきそうに屹立する性器を露わにする。僕はためらいもせず体の位置をずらしていくと倫也の下半身に顔を埋めた。  ビクビクと脈打つ血管も先端からあふれる雫もいやらしくてゴクリと喉が鳴る。そっと舌先を這わせると腹筋がひくつるのがわかった。 「光琉、さん」 「ん?」  ズシリと重みのある性器を手で包みながら裏筋を辿ると張り巡らされた血管の筋が舌を押し返すように膨らんだ。何度も往復するたび先端の小さな穴からは興奮が浮き出て倫也の味を運んでくる。 「ん、……っ、やらしいな」  上ずった声に倫也の興奮が伝わってきて僕は気をよくした。もっと気持ちよくさせたい。  僕は張り詰めた性器を咥えると口の輪を絞り上下に顔を動かした。拙い口淫だというのに倫也は腹筋を震わせながら感じているようだった。  舌を絡ませながら竿をしごくように動く。先端からこぼれるほろ苦さが高みへの近さを教えてくれた。  倫也は焦ったように僕の髪を掴むと顔を上げさせた。上気した頬に赤みがさしていて、色白の肌に映える。 「出ちゃいそうでヤバイって」 「いいよ、出しても」 「そんなことさせられない」  はあはあと荒い息で倫也は欲望に抗っているようだった。僕は割れた腹筋に舌を這わせながら囁いた。 「いいよ、僕を汚しても」 「バカ……っ、そんなに煽って……知らないですよ」
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