565人が本棚に入れています
本棚に追加
「うあ、っ」
「あー気持ちいい。痛くない?」
「痛くないけど、深い」
「うん、全部飲み込まれそう」
そのままノックするように奥を刺激していく。
「動いてもいい?」
「いいよ」
キスをしてから再び倫也は獣のような動きを始めた。僕の絶対届かない場所を犯しながら角度を変えて何かを探り始める。
ふと何かをかすめた瞬間、電気が走ったように全身が痺れた。
「あっ」
「あ、ここ?」
「あ、ダメ、なにこれ、いや」
さっきまでとは比べ物にはならない乱暴な刺激に僕は首を振った。ゆっくりと高められるものとは違う、直接的な快楽。
「あっ、やだ、怖い」
「怖くないよ。光琉さん大好きだからおれに預けて」
嫌だと言ってるのに倫也は同じ場所を念入りに刺激し始めた。ブルブルと震えながら倫也の身体にしがみつく。
これを許したらもう戻れなくなる。そう直感が告げているのに倫也になら捧げてもいいと思う。
「あ、ああっ、や、ダメ」
「うん、光琉さん気持ちいいんだよね」
さっきまでの優しい交わりとは違って倫也は腰の動きを早めていく。大きな嵐に巻き込まれたように僕はベッドの上で乱れ喘いだ。
「やだ。ダメ倫也」
「今日がんばってねって言ったでしょ」
「言った、言ったけど」
「おれの愛情をたくさん伝えるからね、受け止めて」
大きなグラインドについていくのに必死でしがみつく。だけどそうすればさらに深く潜り込んできてめちゃくちゃに抱かれてしまう。
「倫也、どっかにいっちゃいそう」
「ここにいるよ」
「あ、なにか、来てる、倫也」
「うん、大丈夫、委ねて」
大好き、とキスとされた瞬間だった。
今まで感じたことのない大きな波に襲われ全身が飛ばされた感覚。息が止まって、一瞬空に届いたような。
「あ、ああああっ」
強く全身が痙攣し、性器からは水のようなものが迸った。倫也は動きを止めず、僕の膝に手をかけるとさらに奥深くもぐりこんだ。
何度かの抽挿のあとに「う、」と呻くと熱い飛沫を奥へとぶっかける。それを受け止めている間もドクドクと二人の心拍が重なった。
深い絶頂の後は一気に力が抜けてどこも動かせなくなる。はあはあと荒い呼吸を繰り返していたら倫也が唇を寄せてきた。キスの合間にも息が止まってしまいそう。
「何これ」
怖いくらい気持ちがよかった。体がバラバラになったかと思った。指一本も動かせない脱力で呟くと、倫也は嬉しそうに頬を寄せてきた。
「光琉さんめっちゃ可愛かった。一気に搾り取られてすごかったな」
「こんなの覚えちゃって大丈夫?」
もう前には戻れなくなりそう。
「前に戻らないでよ。おれなしじゃいられない身体にしちゃおう計画なんだから」
「え、怖っ」
これ以上倫也を求めるようになったらどうなっちゃうんだよ。
怯える僕を尻目に倫也はものすごくご機嫌なようだった。
「ね」と指を絡めながら倫也は僕の胸の上に耳を乗せた。
「一生一緒にいようね」
「倫也が僕に飽きなかったらね」
「飽きるはずないでしょう? おれは光琉さん一筋ですよ」
まるで誓いのキスのようにまぶたに唇が落ちる。頬に、おでこに、鼻の先に、唇に。
「あなたがずっと俺を好きでいてくれるようがんばるので、そばにいてください」
「倫也もね」
ずっと欲しかった。
自分を愛してくれる人が。たった一人の大切な人と想いを通わせて愛し合いたい。それだけを求めていた。
優一に片思いしていた時の苦しみを思い出すと今でも少しだけ辛い。嘘をついて自分の心を誤魔化し続けることも。
だけど倫也と一緒なら。
もう自分を偽ることもないと信じたい。
「大好き、光琉さん」
「うん、僕も好きだよ、倫也」
僕たちは手を繋いだまま深い眠りに落ちていった。
全身がくたくたなのに心は満たされて幸せな気持ちでいっぱいで。
目を覚まして「おはよう」のキスをする。
一緒にご飯を食べて、同じ家に帰る。
倫也の家の前に着くと玄関前の木がサラサラと葉音をたてて僕を歓迎するかのように枝を揺らした。
「ただいま、って言って光琉さん」
倫也が耳元で囁いた。
僕は頷いて、もらったばかりの鍵を差し込んだ。回して取り出すと扉に手をかけ開く。
「ただいま」
ここから二人の生活が始まる。
長く続く未来へ向かって。
fin
最初のコメントを投稿しよう!