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「カケル…あぁ、また…カケル、大丈夫?……う…?…げぇっ…」
後を追いかけてきたお母さんの様子がおかしくなった。
「おぇ…ゲェッ……カゲェル…」
蛙が潰れたような声で、僕の名前を呼んでいる。
僕は演技をやめて、お母さんにトイレを貸してあげた。
「大丈夫だよ、お母さん。苦しいのは最初の三時間くらいだから…夜には動けるようになるよ…」
僕はゲロゲロと苦しんでいる母の背中を、いつもしてもらっているように優しくさすってあげた。
でも、僕はこんなことをしている場合ではないのだ。
―――ニコちゃん…
僕はパジャマのまま家を飛び出した。
ニコちゃんのママ、僕が見たことに気づいてるのかな?追いかけてきたりしないよね…
僕は不安と恐怖に襲われた。
恐る恐る、走りながらニコちゃんの家を振り返った。
ニコちゃんの家の前に、服と手にベタベタと血をつけたニコちゃんのママが立っていた。そして、僕に向かってその真っ赤な手を振った。
―――え?!
僕は驚きと恐怖で足元がふらついた。危ないと思って前を見てから立て直して、もう一度振り返ると、ニコちゃんのママはいなかった。
―――幻?
とにかく、ニコちゃんのママが追いかけてこないことに安心して、急いで学校へ向かった。
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