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「ヴィリバルト。ほら、お姉様よ~」
あれから十年近い年月が経ちました。私は生まれたばかりの第三子である長男ヴィリバルト・フェリシタルを抱きかかえています。近くにはヴィリバルトよりも五つ年上の双子の姉妹、アイナ・フェリシタルとカリナ・フェリシタルが興味津々で生まれたばかりの弟を見つめています。
この二人は双子なのに性格が全く似ていません。なんというか、アイナはやんちゃなお姫様。カリナは逆に大人しく、控えめなお姫様なのです。でも、二人はよく一緒にいるので、仲は良好なのでしょう。
「わぁ~、このこがわたくしのおとうとなのね!」
「あいな、はしゃぎすぎですよ。おちついて」
そんなことを言いながら、アイナもカリナもヴィリバルトの顔を覗き込んでいます。アイナとカリナが生まれたときも賑わっていた王国ですが、ヴィリバルトの誕生はもっと賑わっています。なんといっても王子、つまりは世継ぎの誕生なのですから。まぁ、お義父様やお義母様はアイナとカリナが可愛くて仕方がないようですが。それこそ、ずっと一緒にいてもいいとおっしゃっているくらい。
アイザイア様は、今から二年前に王位を継がれました。なので、今は国王陛下として忙しい日々を過ごしていらっしゃいます。それでも、アイナとカリナとも遊んでくださるので、とてもいいお父様だと思います。もちろん、ヴィリバルトのことも大切にしてくださっています。
「おとうさまは~?」
「お父様は今お仕事中なの。もうすぐ、いらっしゃるからね」
アイナの問いかけに、私はそう答えます。本日はヴィリバルトが生まれて丁度十日が経った日。なので、アイナとカリナと対面させることになったのです。親子水入らずで、ということから使用人は最低限のみ。ですが、肝心のアイザイア様はお仕事が長引いており、少々遅れております。ちなみにですが、私はヴィリバルトのことや産後のことがあるので、公務はお休み中になります。公務をしたいと言ったこともあるのですが、過保護なアイザイア様が働かせてくれません。
「モニカ、アイナ、カリナ、お待たせ」
そんなことを考えていると、アイザイア様がお部屋に入ってこられました。控えている使用人の人たちが、一斉に一礼をします。それに応えながら、アイザイア様は私たちの元へとやってきてくださいました。
「ヴィリバルトは、眠っているようだね」
「はい、ぐっすりと」
私はアイザイア様のお言葉に返事をしながら、腕の中でぐっすりと眠るヴィリバルトのことを見つめました。髪は綺麗な金色。目の色は青色でした。アイザイア様の子なのですから、間違いなく美形になることでしょう。それに、王子様なのですからきっとこの子もご令嬢にモテモテになるわ。
「おとうさま~、あいなにもかまって~!」
「……あいな、こまらせちゃだめ、です」
そんな中、アイナがアイザイア様に抱き着きながら、そんなことを言います。アイナは甘えん坊なお姫様でもあるので、アイザイア様にべったりです。カリナも甘えたそうなのですが、我慢しているようですね。それくらい、私にだって分かります。
「はいはい、アイナ。……カリナも、おいで」
「……でも」
「カリナ。貴女もまだ子供なのだから、甘えられるうちに甘えておいた方が良いわよ」
渋るカリナに、私はただそう言います。すると、カリナも照れたようにアイザイア様に抱き着きました。この子たちも、いずれは王国を背負って嫁いでいくのよね。……あぁ、そんなことを思うと今から悲しくなっちゃいそう。まだ、この子たちは五歳なのに。でも、王国を背負っている。
そう思いながら、私はアイナとカリナに抱き着かれるアイザイア様を見つめていました。そんな時、アイザイア様と私の視線がふと交わります。すると、アイザイア様は私に対してにっこりと笑いかけてくださいました。なので、私もにっこりと笑い返します。どこか、腕の中のヴィリバルトも笑ってくれたような気がしました。まぁ、すやすやと眠っているのですけれど。
アイザイア様がいて、アイナがいて、カリナがいて。そして、ヴィリバルトがいて。そんな日々が、私の幸せ。それが私、モニカ・フェリシタルの幸せなの。
【END】
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