背中

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「ちょっと失礼します」 と優之進は、近くで稽古している人に竹刀の振り方を教え始めた。 孫次郎と岡本は、神棚の前に座り、稽古の様子を見た。 「優之進は、剣も強いが人に教えるのも上手んだ」 と岡本は言い、 「稽古が始まる前に来て、床を綺麗に掃除する。  前は終わってからもしていたが、今は生徒が交替でやっているんだ」 と言った。 「そうなのですか」 とびっくりしながら孫次郎が言うと、 「もうすぐ稽古が終わるから優之進と立ち合ってみなさい」 と言った。 稽古が終わり、生徒を見送っている優之進に、 「孫次郎と立ち合ってくれるか」 と岡本が声をかけると、 「はい」 と優之進は返事をし、掃除をしようとしていた生徒に声をかけてから、壁にかかっている竹刀を手に取り、中央で待っている孫次郎の前に立つ。 「よろしくお願いします」 と優之進は深く頭を下げて、竹刀を中段に構えたので、 「よろしくお願いします」 と孫次郎も慌てて言って頭を下げ、中断に構えた。 孫次郎は、道場に通っているので何回も立ち合いをしたが、優之進から今まで感じたことのない凄まじい力に動揺した。 目の前の優之進が、どんどん大きく見えてきて体が全く動かない。
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