0人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
「ちょっと失礼します」
と優之進は、近くで稽古している人に竹刀の振り方を教え始めた。
孫次郎と岡本は、神棚の前に座り、稽古の様子を見た。
「優之進は、剣も強いが人に教えるのも上手んだ」
と岡本は言い、
「稽古が始まる前に来て、床を綺麗に掃除する。
前は終わってからもしていたが、今は生徒が交替でやっているんだ」
と言った。
「そうなのですか」
とびっくりしながら孫次郎が言うと、
「もうすぐ稽古が終わるから優之進と立ち合ってみなさい」
と言った。
稽古が終わり、生徒を見送っている優之進に、
「孫次郎と立ち合ってくれるか」
と岡本が声をかけると、
「はい」
と優之進は返事をし、掃除をしようとしていた生徒に声をかけてから、壁にかかっている竹刀を手に取り、中央で待っている孫次郎の前に立つ。
「よろしくお願いします」
と優之進は深く頭を下げて、竹刀を中段に構えたので、
「よろしくお願いします」
と孫次郎も慌てて言って頭を下げ、中断に構えた。
孫次郎は、道場に通っているので何回も立ち合いをしたが、優之進から今まで感じたことのない凄まじい力に動揺した。
目の前の優之進が、どんどん大きく見えてきて体が全く動かない。
最初のコメントを投稿しよう!