背中

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「そうなんだ。  それで土が掘れちゃうんだね、  それに遅くまで灯りがついている。  優さんは、あれだけすごい才能があるのに人より何倍も努力しているんだね」 と政は言って、再び一口お茶を飲み、 「自分の時間を割いてまで、みんなのために色々やってくれる。  それでいて表情や態度に一切出さないのだから本当にすごいよ」 と言った。 (人の見ていないところで努力しているのだ) と政次郎は思いながら、女の人と話している優之進の背中を見つめた。 その夜、どうしても優之進の姿を見てみたいと孫次郎は思い、物陰に隠れて庭に出てくる優之進をじっと待っていた。 刀を腰に差した優之進が、庭に出てきて刀を抜くと月の光が反射して輝いて見えた。 そこからは時の経つのを忘れ、優之進の刀捌きに見入ってしまった。 一つ一つの動きに無駄がなく美しいの一言に尽きる。 優之進が、刀を鞘におさめたのも孫次郎は気付かなかった。 「岸川さん、終わりましたよ」 と優之進の声が聞こえ、はっとしたが初めから孫次郎が見ているのは分かっていたのであろう。 「盗み見して申し訳ありません」 と孫次郎は、物陰から立って頭を下げると、 「いいのですよ」 と優之進は笑顔で言い、 「せっかくですからお茶でもどうですか?」 と聞かれたので、
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