序章

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序章

ザクッ ザクッ 灰を掻き集める。 ただ、ひたすらに掻き集める。 成れの果て、人の残り香、その残滓を。 我々の生活を成り立たせる動力となっている灰の起源を、知る人はきっと誰も居ない。 疑問に思う人すら居ないだろう。 灰は、先人達の知恵と努力により、私達の生活に欠かせないものとなった、 それが、聖書に書かれている教えだ。 神の言葉を疑う奴など、この世界には一人も居ない。 ザクッ ザクッ …娘が知ったら、何と言うだろうか。 今している事は、禁忌に触れる行為だ。 それがどれだけ愚かしい事か、私にだって分かっている。 きっと、得るものよりも喪うものの方が遥かに大きい。 でも…、それでも、、 ザクッ ザクッ 掻き集めた灰に蝋を流しながら、人の形へ固めていく。 少女の姿をしたそれは、胸の辺りに、ぽっかりと、小さな穴が空いている。 古文書の通りであれば、ここに、彼女の炎を灯せば、望むものが手に入る筈だ。 中央の奴らが行っている手術も、その古文書を参考にしていると、旅の道中で耳にした事がある。 大丈夫、 何も、問題はない。 「……もう少しだ」 折れて、小さくなってしまったキャンドルを手に取る。 そこに灯っている筈の彼女の炎は、今ではもう、消えてしまっていた。
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