二章

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「もう帰ろうって。冬の間は外に出ちゃ駄目だって、母ちゃんも言ってたよ」 確かに、景色が少し、濃くなったような気もする。 これ以上、此処に留まるのは危険かもしれない。 「そうね…、このぐらい持ってけば、爺ちゃんも喜ぶか」 鍬を振る手を止め、台車に灰を詰め込んだ土嚢袋を放っていく。 「ほら、あんたも手伝ってよ」 傍で突っ立っている少年の手を強引に引き、袋を持たせる。 面倒くさそうな顔をしながらも、少年は袋を台車に積んでいく。 「ちょっ…、姉ちゃん、どうしたの、その手」 「え?」 少年の声に、思わず自分の掌を見る。 手は煤けて黒く汚れ、所々、燃え滓のようにポロポロと崩れ落ちていた。 ある日を境に、体の一部が、こうやって灰の様に煤けて崩れ落ちていくようになった。 そんな私を見て爺ちゃんは、『ちょっとした病気だ。人に伝染るといけないから手袋で隠すようにしなさい。症状の事を誰かに話してもいけないよ』と言って、手袋を渡してくれたんだけど、今日は鍬を振るのに億劫で、手袋を外していたのを忘れていた。 「…ああ、手袋外して作業してたから、灰が手に付いて汚れちゃったみたい」 そう言いながら、慌てて手袋をはめる。 「手、ボロボロじゃん。やり過ぎだよ」 少年が何かを差し出しす。
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