序章

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あの時、咄嗟に回収出来たのは、僅かばかりの灰と、彼女のこのキャンドルだけ。 足りない灰は掻き集めたもので賄い、継ぎ接ぎながら、必死に彼女を形作った。 本来であれば、同質の灰と、対象とする人物の炎が灯ったキャンドルを用意しなくてはならないが、手元にあるのは、不純な灰の塊と、炎の消えたキャンドル一本。 ……ここからは、完全に我流だ。 古文書の手順通りには出来ない。 独自の解釈に基づいて、作業を進めていかなければならないんだ。 「……」 あぁ、神よ、どうか、愚かな私をお許しください。 他には何も要らない。 私の願いは、望みは、ただ一つ。 だから、 だから、どうか、これだけは、、 「……………」 折れたキャンドルを頭上に掲げる。 「っ………」 何かが抜けるような脱力感と共に、彼女のキャンドルへ、自分の炎が燃え移るのを感じた。 震える手で、炎が灯ったそのキャンドルを握りしめながら、灰と蝋で作られた人形の、胸の空洞部分にそっと収める。 炎は『箱』に入れ、灰人形の胸元に収めなくてはならない、ということも古文書には書いてあったが、結局、その箱がどういうものかが分からず、用意する事が出来なかった。 …箱の有無ぐらい、大した差異はないだろう。 要は、灰で固めた人形の胸元に、炎を収めれば良いんだ。
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