二章

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「旅の途中で立ち寄った森の話ってしたっけ?」 「森…?」 少年が首を傾げるのも無理はない。 灰に覆われたこの世界では、植物が育つ為の光も栄養素も無く、植物というものは架空の産物となっている。 かくいう私も、爺ちゃんに話を聞いて実物をこの目で見るまでは、植物というものが、この世界にある事すら知らなかった。 「あぁ…、森っていうのはね、小さい植物や大きい植物が沢山生えて出来た、洞窟みたいな場所の事を言うんだよ」 「植物って、綺麗な緑色をした生き物だっけ?本でしか見た事ないけど」 少年は旅の話を聞くのと同じぐらい、本を読むのが好きだ。 旅の道中で行商人から譲り受けた、植物が沢山描いてある本をあげてからは、穴が空く程それを読み込んでいるらしい。 「そうよ。…ただ、私達が見た森は、緑色ではなかったけど」 「え、でも、本には緑色だって……」 「ううん、灰色の森だった。そこで出会った行商人が言うには、原理は分からないけど灰から養分を得て育ったんじゃないかって。その森、『灰海』って呼ばれてるらしいよ」 灰は、この世のあらゆる動力源を賄っている。 つまり、どういう理屈かは分からないが、灰には何かしらのエネルギーみたいなものがあるということで、 そのエネルギーを吸い取って、灰海の植物達は生まれたのではないか、という事を行商人は言いたかった訳だ。
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