二章

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彼の話では、大昔にはこの世界にも、本の中で描かれているような緑力しい植物が溢れていたと言う。 灰海は、元々、そんな植物達が群生していた森であり、その森の残滓が、灰の不可思議なエネルギーに侵されて、環境に適応しながら姿を変え、今の姿になった、という話は、中々に興味深いものだった。 「灰海?」 「本に書いてなかった?『海』っていう大きい水溜まりの事。灰色の森が、その大きい海みたいに見える事から灰海って呼ばれてるんだって」 水は、大変貴重な資源である。 これも行商人から聞いた話だが、植物と同じように、大昔には、『海』とか『川』とか呼ばれる大きい水の溜まり場があって、人々はそこから飽きるぐらいに水を得ることが出来たとか出来ないとか…… 今は、地中から水分を掘り出し、しかもその殆どが、中央を含めた大都市に占有されているのだから、それが本当なら夢のような話だろう。 「灰海には動物も居たのよ。ほら、『鹿』とか『馬』とか、それも本に載ってたでしょ?本で見た姿とは大分違ってたけど、皆、キラキラと輝く灰色の毛並みをしてて、降り積もった灰を食べながら暮らしてた」 「凄いなぁ……、本の中の世界がそのまま飛び出して来たみたい」 少年が更に目を輝かせる。
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