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海から戻ってきた漁船の波を切る音が遠く聴こえている。 薄いオレンジ色の光が、水平線に広がって行くのが分かる。 一昨年、彼ときみはこの浜辺で一緒に時間を過ごした。 それは決して悪い事ではないのに、きみも彼もここに来るのを何となく悪い事をしているように感じながら、それでもこっそりとこの浜辺に来た。 今朝と同じようにビールを飲み、ヘッドフォンの片方ずつを耳に挿して、同じ音楽を聴きながら、明けていく空を見ていた。 来年にはここに、普通に来られるといいね、と彼は言った。 きみは、あなたと居らればどこだっていい、と答えた。 彼は立ち上がって、花火をしようと言った。 きみと彼は二人で、持ってきた花火をした。眩く輝く様々な色の火の粉と、火薬の匂いと。 吹いて来た風に煽られた煙が目に沁みるのに、きみも彼も、何もおかしくないのに笑っていた。
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