3年夏大会

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 校歌の後、応援席への挨拶のためもう一度整列する。スタンドには横尾先輩と相川先輩の姿があった。ろくに話したこともなかったのに、なんだか懐かしい気持ちになる。  甲子園に出られたことで、少しは彼らに報いることができたのだろうか。 「こんなこと俺が言うのも烏滸がましいけどさ、」  また右隣から成田の声がした。顔を向けると、応援席を見つめる彼の横顔は俺よりも頭一つ分高い位置にある。入学した頃はあんなにチビだったくせに、生意気な奴だ。 「楠本がこのチームに居てくれて、本当に良かった。ありがとう」  成田の言葉に、不意に目頭をツーンとした痛みが貫く。俺はそれが溢れないように慌てて顔を上に向けた。  雲一つない青空がちっぽけな俺を見下ろしている。確認はしていないが、隣に並ぶ皆も今同じ景色を見ているのだろうか。 「……馬鹿。たかが2回戦の後で言うセリフじゃねぇよ」 「お? もしかして泣いちゃうのか?」  茶化したように言う成田に、俺は正直に答えた。 「みんなで優勝まで行けたら、泣いちゃうかもな」 「そっか。じゃあ、絶対しないとな。優勝」  応援団に深く深く頭を下げる俺たちを、温かい拍手が包み込む。最後の夏。俺たちが主人公の夏はまだ、始まったばかりだ。
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