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「アウトォー!」
審判が高らかに宣言した。地鳴りのような大歓声が甲子園を揺らす。
完全試合達成。高校野球界に、成田健吾というスーパースターが誕生した瞬間だった。
球場の全ての人間が成田ただ1人を称える中、スポットの当たらない隅っこ。脇役はグラブの中のボールを見つめ、誰にも知られず拳を握った。
いつものように仲間と勝利の喜びを分かち合い、対戦チームへの礼を終える。校歌斉唱のために整列しながら、右隣の成田がボソリと言った。
「楠本、ありがとな」
「……勘違いするな、別にお前のためじゃない。アウトにできなければ試合は続く。初ヒットが出たことで相手が変に勢いづくかもしれないし、打たれた動揺で投球が乱れることだってある。お前がそんなに柔だとは思ってないけどな。
ただ1%でも負けの芽があるなら摘んでおきたいと思っただけだ」
「そんな早口で言わなくても分かってるよ」
成田の苦笑と同時に校歌が流れ始める。俺たちもまた噛み締めるように歌い出す。
甲子園で仲間と歌う校歌は何より格別な味がした。
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