3年夏大会

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 2回戦開始前。俺は監督から「余裕ができたところで成田を下ろし、残りはお前に託す。準備しておけ」と言われた。監督のプラン通り、成田は好投し、打線も順調に得点を重ね、5回終了時で7ー0。圧勝ムードが場内に漂った。  しかしそんなワンサイドの展開の中で9回ツーアウトになった今でも俺の出番はやってきていない。それには大きな理由があった。  ここまでの成田の投球内容。打者26人に対し15奪三振、許したランナーは0。  完全試合。その大記録が彼の目前まで迫っていた。  球場は異様な空気に包まれていた。  相手校の応援団を除く全ての観客が新しいスターの誕生を心待ちにし、大声援を成田に浴びせる。相手校応援団ですら、ほとんど負けを察しながらもある種の期待を込めて試合の行方を見守っているようだ。  27人目の打者への初球。成田はこの日最速のストレートをキャッチャーミット目掛けて投げ込んだ。
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