エピローグ

3/3
43人が本棚に入れています
本棚に追加
/88ページ
「見て、陽菜。桜が開花しているよ」  公園へ立ち寄り、ライトに照らされた桜を久隆が指さす。  久隆は毎日10時半のこの次元を周る魔法列車に乗って、元王族としての任務をこなし16時半に帰ってくる。 「本当だ。去年は私、見られなかったからなぁ…」  去年の今頃は、異次元で奮闘していた。 「僕も、全然ここに来る余裕がなかったからね。ひとりで見てつまらないし」  ふたりベンチへ座り、視線を合わせ「今年は一緒だね」とほほ笑んだ。 「今年だけでなく、来年も、再来年も…ずっと一緒」  私達はしばらくほぼ蕾の桜を堪能した後、 「帰ろう」「うん、帰ろう」と手をつないで歩き出した。  久隆と私の爪にはお揃いの桜がモチーフのネイル。  毎回久隆のネイルは、久隆へのありったけの気持ちと、怪我無く無事に帰ってこられるように念を込めて施術する。  もう二度と、離れ離れになることの無いように。  部屋に着き「お疲れ様」と言って今日も仕事で疲れ切っている私を、早速久隆は優しくキスで癒してくれる。  久隆は私の耳を甘噛みした後、 「明日は定休日だろ。今夜は…くったくたに疲れるまでめいっぱい癒してやるから、覚悟しろよ」とイジワルな顔をする。  どっちやねん。  もう何が言いたいのか…よくわかっています。  明日は10時の魔法列車でエミリーとアシャード王子が遊びに来る予定。  それまでに起きて支度をしなくては。  お願いだから久隆、エミリーの前でその久隆は出さないでね。  私は「今日の疲れも手強いぞ。ちょっとやそっとじゃ癒されないから、覚悟してね」と久隆の唇に軽くキスをした。 (おしまい)
/88ページ

最初のコメントを投稿しよう!